今回は、私が【看護師】という職業を目指すと決めてから、精神科看護を選ぶまでのことについてお話します。

目次 [ close ]

精神科看護を選ぶ

さて、その頃憧れていたミュージシャンは、親に話せる勇気もなく、考えてみれば臆病だったのか…いい子でいたかったのか分かりませんが、結局は母の言う【看護師】の路線に乗りつつありました。『いやぁ~・・』と難色を示したこともありましたが、『じゃあ、何をするの?』と聞かれて、『うっ…』と黙ってしまい、そうしながらも刻一刻と高校卒業の日は迫っていました。『(看護師の資格を)持ってて損はない』という言葉に『ん~、まぁ、確かに…』と納得してしまい、母の知り合いが通う看護専門学校の願書を提出することになりました。

私立の専門学校ですから、学費も高いので母から【依託学生】の提案をされました。
病院に学費を出してもらう代わりに、看護師になったあとはそちらの病院で働きます。という制度です。
医療のことなんか何一つ知りません。義務教育の中学校を終え、普通科の進学校に入学したのですから。それに、自分が興味を持って選んだ道でもありません。何も分からず、手探りで市内にある病院に電話をかけ、依託学生として私を学校に出して欲しいと懇願しました。
私の時代はまだ『男の学生は獲っていない』と断られることが多いでした。
次々に断られる中、同じように次の病院に電話をかけお願いをしたところ、『では、今から来られますか?』と言ってくれる病院にたどり着きました。その病院ってどこにあるんだ?電話帳で調べただけですので、今から向かう病院が何処にあるのかも分かりませんでした。

どうやって調べたかは覚えていませんが、その病院に着きました。そこは、精神科の病院でした。なんとなく、心の病を抱えた人が来る病院ということは分かっていましたが、特に抵抗は感じなかったと思います。きっとそれより、やっと依託学生として交渉が出来ると思った気持ちが強かったのかもしれません。
案内されると、そこに年配の男性がおりました。『君は、一生ここで働く気はあるのかね?』と言われ、黙ってしまいました。『まだ、働きもしていない18の僕が、一生ここで?分からない…答えられない…』と思ったと同時に、何か印象の悪い感じを受けました。

しかし、その後に階段を上ってきたもう少し年配の白衣を着た男性が現れました。
最初の男性に『ここの部分は説明した?』と聞き、最初の男性がたじろいながら『いえ…まだ…』と答えると、『何の話をしていたんだね?』と白衣の男性に言われ、最初の男性は黙ってしまいました。私は心の中で『フッフッフ』と笑っていたら、白衣の男性に別室に案内されました。
その白衣の男性が院長兼理事長でした。とても穏やかな表情でありながら、毅然とした雰囲気を感じました。私は、無知ながら看護師を目指して頑張りたいという旨と、その後はここの病院で恩返しがしたい。という思いを伝えた結果、院長は『よし!』と立ち上がり、内線を使ってどこかへ連絡しました。『真面目そうな青年なのだが、うちで獲ってもいいかな?』と言ってくれました。こうして、私立専門学校へ入学する準備が整いました。

次回は、看護学生から委託病院に入るまでお話させて頂きます。